折角、ガンなんだしさ
私には4つ上の姉がいる、2人姉妹。
姉に相談があるから、夜電話に出てねとLINEで事前に通達。
私「もすもす、おねえちゃん?」
姉「何?怖いけど、理解したよ。離婚?離婚でしょ。」
なぜ、離婚に確定しているのか
私「違う違う。あのさ、私、乳がんだわ。」
姉「がーん。」
これ、本当に言う人、いるんだね。笑
癌患者にガーンって言ってしまいました。
天然ガール46歳。
とはいえ、そこはバリバリ働く女なので実に冷静で、状況や今後の予定、私の仕事、子どもの様子、旦那との連絡方法などあらゆる情報を整理していた。
私「もう、月末にはハゲよ。波平に毛量で負ける日が来るとは。」
姉「あはは、ウケる。波平は横に結構、髪あるし完敗じゃ〜ん。って、いやいや、ちょっと待って。折角、ガンなんだしさ、もうちょいヒロインになっていいんじゃないの?」
折角、ガンなんだし!!そんな言葉が世の中にあったとは!?
折角ガンなんだし、色々とやりたいと改めて思ってしまった。
で、論点は両親への告知。
私「とにかく、可愛い娘が癌はかなり凹むよ。おそらく、食欲が落ちるレベル。後期高齢者には死活問題だよ。隠し通す?」
姉「いや、無理でしょ。LINEでテレビ電話覚えさせなきゃよかったわ。ジィジは死に対して恐怖心が昔からあるし、バァバは芸術家だから、まともにはうけとめきれないよね。」
そう。私の母は、芸術家…のような人。
昭和19年生まれなのに、国立大学工学部の工学デザインをでて、一流の車企業でデザイン部に入社。
当時の新聞に、これからの女性!と載ったらしい。
しかし実情は、お茶汲みばかりで、私にもデザインをさせて下さいと進言したら、
「女は黙ってろ!」
とキレられて、逆ギレ。
翌日、バリカンで髪を刈り、五分刈りで出社してのけた恐ろしい女である。
結婚して家庭に入っても、大人しくするわけがなく、近所の子どもたちを集めてお絵描き教室を開いていた。
テンヤワンヤの大騒ぎのお絵描き工作教室。
床や壁や洋服を、画材で汚しても何も怒られないが、人のをそのまま真似るなど、オリジナリティにかける作品を生徒が作ると、ブチギレ。
その日に子どもに出されるおやつのリンゴは乱切り。怖っ。
家事もオリジナリティ溢れる方で、
立食パーティーだといって、椅子が庭に放り出されてしまい、立って食べた和食の夕飯
疲れた!といって、イチゴを1パックをそのまま詰めて、「後は自分でどうにかしろ」というメモしか入ってない弁当
カレーフェア開催!と家中の鍋でカレーを何種類もつくり、カレーフェアが数日間継続
私の婚約のご飯会で、相手の両親へ「遠くからようこそ」という言葉を準備しておきながら、緊張で使えず、スープに入っていた伊勢海老に「遠くからようこそ」と突然の声かけ。静まる婚約式。
もう、普通の人の感性ではない。
よくあの人の元で、私も姉もまともに育ったと思う。
ちなみに父親は裕福な庶民の家で育ったので、お優しい方です。どんな母の狂気の沙汰も、
ジィジ「あなたは、ユニークな人だね💕」
あほか。
朝起きたら、枕元に「おめざ」として、おはぎが置いてあるようなご家庭で育ったそうです。
なぜ、こんなアグレッシブでファンキーな女を妻にしたのか。
謎です。
姉「暴れはしないけど、凹みまくって、ハンストとかしそうだよね。」
私「宗教とか飛び込んじゃうかな。滝行とか。」
姉「それはマジで止めよう。。金で解決しようとはすると思う。健康食品とか大量に送られるわよ。」
私「発酵食品とか凄そう。しかも、クール宅急便じゃなくて、常温でヨーグルトとか送られそう。」
結論として、姉が私の状況を見て、伝えることになった。
本当は手紙とか書いてあったんだけど、どう考えて書いても、悲しむ親の顔しか浮かばなくて、投函する勇気がなかった。
自身で親をフォローもできる距離も余裕もなかった。
姉が
「まあ、とにかく任せて。こっちはこっちでどうにでもなるから、自分の事だけ考えて。必要なら子どもも預かる。助けて欲しいとなったら、どうして欲しいまで具体的に指示しなくていいから。ヤバイの3文字でいい。具体的に指示出せないから、ヤバイの。ね。折角、ガンなんだから!」
そうだね。折角だもんね。
おねーちゃん、ありがとう!!